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 朝からこの世の終わりのように曇っていた空は、チャイムが四限目の終了を告げる少し前から冷たい雪を降らせ始めた。はしゃぐ女子にただ苦笑して見せた教師は早めに授業を切り上げて、暖房の効いた職員室へと引き上げる。我先にと教室を飛び出した何人かの生徒が、ベランダの手摺から身を乗り出し歓声を上げた。

「元気だねぇ」

 呆れ交じりの声が、落ちる。

「混ざってくれば?」

 サクラは皮肉混じりに笑って、傍らに立つヤマブキを仰ぎ見た。

「冗談」

 大仰に肩を竦めて見せたヤマブキも同じように笑って、二人は教室を後にする。廊下に出てみれば、既にどの教室も午前の授業を終えていた。

「私が寒いのダメなの、あんたも知ってるでしょ?」
「そうでした」

 今度はサクラが肩を竦めて、ヤマブキは憮然とした表情を浮かべる。
 HRのある教室棟を抜けると、喧騒は一気に遠のいた。

「ほら、すねないで」
「すねてない」

 サクラとヤマブキ以外誰もいない職員棟の廊下は静かで、サクラは自分をおいていこうと早足になるヤマブキを追いかけながら、そっと肩にかけたスクールバッグの表面をなぞった。無意識の内の行動に、ヤマブキが保健室のドアをノックする音が重なる。

「失礼しまぁす」
「…失礼します」

 保健室の中は程よく暖房が効いていて、サクラは廊下との温度差に身震いし、ヤマブキは歓喜の声を上げた。

「いらっしゃい二人とも」
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