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小噺専用
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 肩に乗せたミヤビが落ちないよう片手で支え、ベッドルームを出たカグヤは力なくソファーに沈んだ。


「・・・」


 普段は垂れ流しにして、気にも留めない妖気の行方を追えば、それらが全てミヤビへと流れ込んでいることがわかる。


(父親譲りだな、これは)


 声には出さず小さく笑い、抑え込んでいた妖気をそっと解放すると、あらかじめ結界で覆っていた室内にはあっという間にむせ返るような妖気が満ち、――ドクン――ミヤビの気配が色を増す。
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「ミヤビって猫舌?」



 冷ましもせず紅茶に口をつけた千尋は悪気なく尋ねたが、ミヤビは恨みがましい目で彼女を見た。



「猫舌っていうなよ、熱いの駄目なだけじゃん」
「それを猫舌っていうんだよ」
「猫舌ってゆーな」



 ミヤビが何故「猫舌」という例えに拘るのか、思い当たる節のあるサクは小さく笑みを零し、千尋に耳打ちする。



ミヤビは妖狐だから
「・・・あぁ、そういうこと」
「・・なんだよ」
「別に? 変なこと気にするんだなぁと思って」
「うるせぇ」
「変なの」



 千尋はサクと目配せし笑った。









遠くで 私を呼んで
私は ただただ無力で
共にいる術をしらない

連れて行って 優しい人
臆病な手を引いて微笑んで
私の願いを叶えて



「ねぇ、千尋」



もしも願いが叶うなら



「私ね?」



ずっと二人でいたかった
 帰る場所は今も昔もない。けれど、少なくともついさっきまでは私のことを知る人がいた。
 カグヤという傀儡師[クグツシ]の一族を束ねる妖怪ではなく、私という個人を知り尊重してくれる彼は、もういない。
 ついさっき失われた。私はただ哀しむでもなくその存在が感じられなくなるのを見過ごした。



「私と来る?」



 きっと助けようと思えば出来た。でも、私はそれをしなかった。



「私と一緒にいてくれる?」



 きっと貴女は彼の代わり。でも貴女はそんな事知らなくていい。
 ただ私の側にいて、離しかけて、幸せそうな笑顔を振りまいて。
「母さんっ!!」



 けたたましい音を立て扉が開いた。
 ベッドの上でうつ伏せていたサクは顔を上げ視線を彷徨わせる。



「・・・何?」



 漸く視界に入った愛娘はソファーの側に仁王立ちしていた。



「ゲストチームの一人ってあれ南野だよ! 同じクラスの!!」
「そうだね」
「そうだね、って・・知ってたの?!」
「ミナミノクンが妖怪だって事? それともこの試合に出てるって事?」
「っ」



 シャワーを浴びたまま放置していた髪はもう乾いてる。



「じゃあ、母さんは全部知っててここに来たの?」
「千尋は何が嫌なの? 私が貴女のクラスメイトを殺すこと? それとも貴女に彼のこと何も言わなかった事?」
「嫌とかそういう問題じゃ・・」
「ごめんね」



 どうしてこの髪が茶色いのか、どうして鏡に映る私の瞳は黒いのか。



「私ね、千尋に言ってない事沢山あるの」



 その理由はとても大切。だってその理由がなければ私はここにいられない。



「だけど信じて? 私は千尋の嫌なことはしないから」



 伏せられたサクの視線と揺らいだ妖気に千尋は息を呑んだ。
 やめて。擦れた声で呟いて、小さく一歩後退[アトズサ]る。



「千尋?」
「母さんさっきからおかしいよ、何でいつもみたいに軽くあしらわないの? 小百合さんの事だってホントは一緒にいたくないくせに」
「もう一人の私に会って、彼女に愛を貰いなさい」



 愛なんて貴女に腐るほど貰った。



「花城を怨まないでね」



 その言葉は飽きるほど聞いた。



「貴方を守れない私を許してね」
「そんな事、ない」



 貴女は俺を守ってくれた。少なくとも俺は?死にたい?なんて思ったことない。
 俺は幸福だったんだ。だから哀しまないで母さん。



「ごめんね?」
「あやまらないでよ」
「もう一人の私が、きっと貴方を愛してくれるから」
「うん」



 愛も、幸せも、温かさも、もう十分すぎるほど貴女に貰った。



「最期に、私のお願い聞いてくれる?」



 最期なんて言わないで。



「何?」



 貴女が望めば生きられるから。



「私が死んで、貴方がもう一人の私に会えたら伝えて欲しいの」
「うん」
「私は幸せでした。ありがとう・・・って」



 だから泣かないで。



「必ず伝える。だから笑って?」



 最期に貴女の笑顔を見せて。



「うん。・・おやすみ――」
授業中居眠りして起きたらこんなのありました

オリキャラ → 千尋
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