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 ヴェルメリオとレギが共に所属するパーティーは、長らくスリュムヘイムの盟主スィアチに雇われ、大陸最大の魔境で《迷宮(ダンジョン)》の保守管理を任されている。
 大陸の四分の一を占めるヨトゥンヘイム。更にその三分の一ほどを占める魔境――スリュムヘイム――に点在し、増減を繰り返す数多の《迷宮》を一つ一つ見て回り、個々の状況を報告書にまとめ上司へ提出することがまず基本的な仕事。その他にも、「初心者向け」とされている《迷宮》に魔物が寄りすぎているようなら雑魚狩りを。どこかの《迷宮》が人知れず攻略されていたりすれば、新たな《心臓》を設置しに行ったりもする。
 有能な上司が能力主義なため「できることはなんでも」やらされがちな戦闘職の二人だが、生憎と「スリュムヘイム内で|生まれた(・・・・)魔族の保護(・・)」は業務に含まれていなかった。パーティーを組む仲間の知的好奇心を満たすため、狩りに駆り出されることはままあるが。実際にはそれ専門に雇われている者が他にいた。

 だがまぁ、別に断る必要もないだろうと、ヴェルメリオは拾ってきた魔族を――レギに促されるがまま――直接、レギとルシアに与えられた部屋へと放り込む。
 魔境では何事も自己責任だ。落ちているものを拾おうと、誰かのものを奪おうと、誰からも咎められない代わり誰からも守ってもらえない。弱肉強食。

「ありがと」

 だからレギの「拾い物」が咎められることもないだろう――。
 端から必要としてもいなかった助力――それを大抵の人は「お節介」と言う――へ素直に感謝してみせるレギの頭をなんとなく、くしゃりと撫でてやりながら。ヴェルメリオは「いつものことだ」と肩を竦めた。

「あぁ。いいよ、これくらい。――お前に運ばせるのもあれだしな」

 《マナ》が生み出す魔力にそれなりの余裕があれば、レギのよう細腕の女だろうとそこそこの膂力を発揮することができる。だとしても、女に人一人運ばせて自分が手ぶら、というのはなんとなく嫌…というは、完全にヴェルメリオの都合だ。ちっぽけなフェミニズム。
 どうせ何かしらと戦闘になった時、戦うのはヴェルメリオでもレギでもなくレギに張り付いたルシアなのだから――と、そんな風に考えなくもなかったことだし。全く、これっぽっちも、レギがヴェルメリオに対して感謝する必要はなかった。

「うん」
「ところであれ、本気でルシアのやつどうするつもりなんだ?」
「知らない」
「…中身、空だろ?」
「多分」
「ヴェルナーのとこ行って、奴隷用の記録魔石もらってきてやろうか?」
「……」

「ルシア。いらない」
「だから本気でどうするつもりだよ…」
「洗う」
「…洗って、そのあとは?」
「……ルシア、食べる」
「あいつなんでも丸呑みするじゃん」
「性的に」
「まじか…」

「あいつそういう趣味なわけ」
「レギ。知らない」
「ヴィオレッタじゃあるまいし…。まぁいいや。そういうことならお前、ちょっとこい」
「どこ」
「隣だよ。俺の部屋。それくらいなら別にいいだろ」
「……ルシア、いい。行く」

 ルシアが「いい」と行ったから、行く。

「とりあえずシャワー浴びて、飯な」
「食堂無理。怒られる」
「それくらいなんか取ってきてやるよ。何食べたい?」
「ヴェル?」
「…まじか」
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