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 薄っすらと重い瞼を持ち上げた。



「ぅ、ん・・・」



 零れたのは起きぬけの擦れた声。
 目に飛び込んできたのは、



「――雲雀?」
「おはよう」



 嗚呼、どうして。



「私生きてるの?」
「死んでいいなんて言った?」



 帰って来てしまった。



「言って、ない。ない・・けど、」
「なら君は死ねないよ。絶対に」



 もう二度と会うつもりも、話すつもりもなかったというのに。
 どうして、



「ど、して?」
「君は僕の物だから」



 私は帰ってきてしまったのだろう。
 間違いでは済まされない。ここに、この場所に、偶然辿り着くなんてありえない。



「おかえり、リナ」



 大切なこの町に帰ってきてしまった。



「ただい、ま」



 貴方の下に。






























 アレホド「クリカエスナ」トイイキカセテイタノニ










 戻ってきたらきっと私は繰り返す。あの悪夢を。






























「リナ、行くわよ」



 住み慣れたマンション。見慣れた街並み。



「うん」



 その両方に背を向けて、開け放った玄関の向こうに立つルナに笑いかけた。



「今行く」



 歩き慣れたこの廊下も、使い慣れたエレベーターも今日で最後。
 私達はいなくなる。ここから、この町から、そしてこの国から。



「本当に何も言わないで行く気?」
「うん」



 誰に知られる事もなく。別れを告げる事もなく。



「止められるから、いい」



 何処へともなく姿を眩ます。










「リナ」



 はずだった。



「ひ、ばり・・」
「行くの?」



 何も知らないはずなのに、あたかも知っているかのように貴方は私に問いかけた。



「ごめん・・」



 否定でも肯定でもなく、無意識のうちに零したのは涙と謝罪。
 軽く濡れた私の頬に手を添え、貴方は言った。



「いいよ」
「ぇ?」
「逃がしてあげる。今はね」



 最初で最後だと。



「でも次はないよ」



 何の躊躇いもなく、



「ばいばい」



 私に背を向け貴方は言った。






























「君は絶対帰って来るよ」



 それが必然だと言わんばかりに。









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