血が跳ねた。
「ッ――・・最低っ」
吐き捨てた言葉は微かに赤く、壁に手をあてアスファルトの地面に膝を突いた少女は鋭く舌打ちした。
寒い。
「クソッ」
口汚く吐き捨て微かな動きを見せた気配へと銃口を固定する。
銃声。
銃声。
銃声。
カチリとトリガーが乾いた音を立てそれきり銃声は止んだ。
もう気配はしない。物陰で息を潜めている様子もない。
「・・・っ」
息が荒れる。心臓の鼓動がドクドクと煩い。
切られた首筋から流れる血に体温が持っていかれる。嗚呼――
「ねむ、い・・」
漸く煩い夜も終わる。
血が跳ねた。
「ワォ、派手にやったね」
血溜りの中爛々と輝く赤の目を憂鬱気に持ち上げエキドナは自嘲する。
「全くだ」
長く伸びた銀糸が血を孕み赤黒く変色していた。
嗚呼、なんて事だ。指先一つ動かせやしない。
「どうしてほしい?」
「殺せ」
どうして欲しいかなんて、分かりきった問いを何故繰り返す?
例えどれほど醜悪であろうと生きることを、けれどそれが無理ならば死を望む。
立ち上がれない。それは、もう死と同意義だ。少なくとも私達にとって。
「それが私達の望みだ」
嗚呼、ごめんよリナ。私の大切な片割れ。
ついぞ薄れだした意識にエキドナはもう一度自らをせせら笑い、そして今はいない少女に謝罪した。
私は目の前に立つ悪魔が何と答えるかを知っている。知っているのに、それに抗う事が出来ない。
「――冗談」
ごめんなさいありがとうさようなら。
「許さないよ。君は僕の物なんだから」
ぴちゃり。一歩踏み出した悪魔の足下で血が跳ねた。
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