「こんな世界もうごめんだ」
ジャラジャラと耳煩い音が鳴り、それよりもこの空間に存在していることが不快だと、レイチェルは盛大に顔を顰めた。
「俺は行くぜ」
乱暴な言葉遣いは幼い頃から変わらない。
その凄絶な力も。
年を追うごとに人間味を失ってきた容姿以外は何一つ変わらなかった。
「じゃあなクソジジイ、恨むなら呪われし一族と縁[エニシ]を結び俺を産み落としたあんたの娘を恨みな」
ギチギチと、まるで最強の盾に最強の矛をぶつけた様な。
ギリギリと、まるで自身を食い尽くすように。
「わしは何一つ後悔してはおらんよ」
「ハッ、後悔なんてされてたまるか」
こちとら望まれて生まれてんだよ。
「そうじゃの・・」
全ての音が消え失せると、その場にもうレイチェルの姿はなかった。
ただ残された〝彼〟がはじめて彼女に送った髪飾だけが、
「また会えるかのぉ」
ゆっくりと、彼の手に落ちてきた。
(彼女が死に彼女が生まれ彼女が彼女として生きようと、生きたいと望み選び取った日)
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