:賢者の石
1-01:the dawn [始まり]
1-02:Darkness [闇]
1-02a:覆す事はいつだって出来る
1-02b:力を頂戴
1-02c:来訪者
1-02d:手に入れたもの
1-03:Result [結果]
1-04:Determination [決意]
1-05:Chain [鎖]
1-06:Ideal [理想]
1-07:in the dream [夢の中]
1-08:Letter [手紙]
1-09:Encounter [邂逅]
1-10:Crow [クロウ]
1-11:Master [主人]
1-12:Key [鍵]
1-13:Necessity [必然]
1-13a:再会にして出会い
1-14:Fate [運命]
1-15:Indifference [無関心]
1-16:Silverstone [シルバーストーン]
1-17:Paramnesia [既視感]
1-17a:集う血族
1-18:Secret [秘密]
1-18a:組み分け帽子の歌
1-18b:血統
1-19:Disappoint [裏切り]
1-19a:血を持たない血族
1-19b:隠された狡猾さ
1-20:Supreme [至高]
1-20a:聞こえない雑音
1-21:Window [窓]
1-22:Twins [双子]
1-23:Prison [牢獄]
1-23a:塗り重ねられる仮面
1-24:Silence [沈黙]
1-25:Halloween [ハロウィーン]
1-25a:ノルン
1-26:Declaration [宣言]
1-27:Ripple [波紋]
1-27a:投げられた采
1-27b:悪夢
1-28:Pain [痛み]
1-29:Reason [理由]
1-29a:終末の夜
1-01:the dawn [始まり]
1-02:Darkness [闇]
1-02a:覆す事はいつだって出来る
1-02b:力を頂戴
1-02c:来訪者
1-02d:手に入れたもの
1-03:Result [結果]
1-04:Determination [決意]
1-05:Chain [鎖]
1-06:Ideal [理想]
1-07:in the dream [夢の中]
1-08:Letter [手紙]
1-09:Encounter [邂逅]
1-10:Crow [クロウ]
1-11:Master [主人]
1-12:Key [鍵]
1-13:Necessity [必然]
1-13a:再会にして出会い
1-14:Fate [運命]
1-15:Indifference [無関心]
1-16:Silverstone [シルバーストーン]
1-17:Paramnesia [既視感]
1-17a:集う血族
1-18:Secret [秘密]
1-18a:組み分け帽子の歌
1-18b:血統
1-19:Disappoint [裏切り]
1-19a:血を持たない血族
1-19b:隠された狡猾さ
1-20:Supreme [至高]
1-20a:聞こえない雑音
1-21:Window [窓]
1-22:Twins [双子]
1-23:Prison [牢獄]
1-23a:塗り重ねられる仮面
1-24:Silence [沈黙]
1-25:Halloween [ハロウィーン]
1-25a:ノルン
1-26:Declaration [宣言]
1-27:Ripple [波紋]
1-27a:投げられた采
1-27b:悪夢
1-28:Pain [痛み]
1-29:Reason [理由]
1-29a:終末の夜
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「――私をおいて逝く気か」
血を流す右目に痛みはない。ただ視界は赤く濁っていて不快だ。
「アッシュ・オフィーリア」
床に伏したアッシュは既に呼吸を止めている。死んでいるのだ。サラザール・スリザリンによって造られた人造人間の最高傑作は、もういない。
「…馬鹿が」
いくら呼んでも応えない。何をしても応えない。――死ぬというのはそういう事だ。だからもう、この男に用は無い。力は残された。力さえあれば私の望みは果たされる。契約違反は無い。――なのに血が止まらないのは、何故だ。
「――アリア」
「ルーラ…」
「何があったの?」
「マリアに殺された」
「マリア、って…アッシュと同じホムンクルスの?」
「あぁ」
「…哀しいの? アリア」
「わからないんだ」
「取り戻してあげましょうか」
「……どうやって?」
「引きずり出すのは私の専門よ」
「死者は蘇らない」
「さぁ? どうかしら」
「出来るのか」
「貴女が心の底からそうなる事を望んでいればね」
----
「ルーラ」
「なぁに?」
「ありがとう」
「気にしないで。善意じゃないから」
「わかってるよ」
----
「天邪鬼が二人」
「仲良くしてたら誰かさんが妬くじゃない」
「誰の事だろうね」
「誰の事でしょうね」
----
「この、大馬鹿」
----
私の殺されたハートレス。
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しめやかな聖夜を貫いた感情が私を揺り起こす。
「行くの?」
その感覚を気のせいだと切り捨てる事は出来そうになかった。
「呼ばれちゃったから」
物理的な距離も、隠れ家の結界も超えて真直私の胸に飛び込んできた哀しみを放っておく事は出来ない。作り物の絆に縋っているのは私も同じだから。
「一緒に来てくれる?」
「…いい加減、聞く必要ないって気付きなよ」
どうしたって、見捨てられない。
----
「このままで来たの、やっぱりまずかったかしら」
「仕方ないよ。いくら君だってあの封印をしたままホグワーツに姿あらわしするなんて危険すぎる」
「四人一遍だったし?」
「それもあるよ」
目が覚めたら不思議の国でした。なんて、笑えない冗談だ。
「おはよう」
紅い目をした黒猫が、私に目覚めを促す。
長い尻尾をぱたりぱたりと動かしながら可愛らしく首を傾げてみても、猫は猫だ。
「いつまで寝てる気なんだい?」
私はハッ、と短く息を吐いて、遅ればせ目を丸くする。
「猫が喋ってる…」
恐る恐る手を伸ばすと、ルビーアイの黒猫はくつくつと喉を鳴らした。――笑ったのだ。
「別に噛みついたりしないよ」
初めて聞いた《猫の笑い声》に、私は動きを止める。すると黒猫はおかしそうに目を細め、私の手の下に自分から体を滑り込ませてきた。
「っ――」
手を引く間もない一瞬のことに、私は思わず悲鳴を呑み込む。
当の黒猫は、素知らぬ顔で距離を詰めてきた。柔らかい毛並みが手の平をすり抜けた次の瞬間、首元に温もり。
「おはよう」
「――あ、れ?」
何かがおかしいと気付いたのは、その時だ。
見たこともない部屋の見たこともないベッドの上に横たわっている《私》が誰なのかを、私は思い出すことが出来ない。物心ついてから今に至るまでの記憶の中で、自分自身の存在だけがぽっかりと抜け落ちているという、異常事態。
ひやりと、冷たい手で心臓に直接触られたように、鼓動が止まる。自分が今息を吸っているのか吐いているのかさえ分からなくなって、胸をつかんだ。
寒いのに熱いような、痛いのにこそばゆいような、苦しいのに気持ち良いような、奇妙な感覚が全身を駆け巡る。
自分が見ているものが何なのかすら、私にはもう分からなかった。
「ルーラ」
寒いのに熱いような、痛いのにこそばゆいような、苦しいのに気持ち良いような、奇妙な感覚が私を閉じ込める。
「ルーラ・シルバーストーン」
二本の腕。薄い唇。優しい声とほど良い体温。――宝石のような、一対のルビーアイ。
「それが君の名前だよ。――《ルーラ》」
たった今夢から覚めたみたいに、意識が覚醒する。
それまでの混乱が嘘のようだった。一呼吸ごとに心が軽くなっていくのがはっきりと分かる。
心臓へ触れた手に、温もりが戻った。
「もう平気?」
「う、ん…」
大丈夫、と答える声が掠れていることに気付いて、差し出されるグラス。どこから取り出したのかも分からないものなのに、口を付けることへの抵抗は感じなかった。
背中に添えられた手の動きに合わせて、まだほんの少し揺れていた心が綺麗に凪いでいく。グラスに半分ほど注がれた水を飲み干す頃には、私はすっかり落ち着きを取り戻していた。
やんわり取り上げられたグラスは、私の視界の外で大気に溶ける。
「もう一度眠るといいよ」
「どうして…?」
その時既に、私の瞼は落ちかかっていた。見下ろしてくるルビーアイに魔法でもかけられたように、体から力が抜ける。
「眠って、起きたら、全部わかるから」
ずぶりと、意識の沈む音が聞こえたような気がした。
「おやすみ、ルーラ」
――おやすみ、私の――
(ようこそアリス/終わらない夢の世界へ)
クロウのために窓なりなんなり作ってやらなければと思いはしたが、適度に満たされた空腹からくる眠気には勝てそうもなかった。
「もうだめ…」
ばたん休。正にそんな感じ。
「服、皺になるよ」
「んー…」
幸い部屋は一人部屋だった。誰に見られる心配もなければ心置きなくだらけていられる。
「後は任せた」
面倒事はリドルの仕事。
「お前、当主にならないか」
揺るがない視線に至極真面目な表情。醸し出す雰囲気にさえ冗談の色はない。素面で言っているのだとしたら、相当なものだ。その言葉の意味する所を、よもや当主自身が理解していないはずもないだろうに。
「本気?」
「勿論本気だ。お前にその気があるなら全部くれてやる」
そもそも、緋星が当主になる事は不可能だ。
「当主を決めるのは銀の不死鳥だって聞いたけど」
「アズールが選ぶのはあくまで銀石だ。今までは緋星の不在が銀石を当主たらしめていたに過ぎない」
当主の証とされる銀の不死鳥は契約者を選ばない。表向き誓約者と契約者、両方の力を持っている事になっていても、私の本質は契約者だ。最強の誓約者を見定め禁書を託す事を使命とする銀の守護獣が選ぶはずはない。
「それは分かるけど…それで貴女は何を得るの?」
「自由だ」
「…私が当主になったら、シルバーストーンは好きにして良いのね?」
「当然だ。当主とはそういうものだろう」
ザァザァと、音がする。降りしきる雨にも似た水の音。それはすぐそばで聞こえていて、その向こうから誰かが私を呼んでいた。
それが誰かなんて、考えるまでもない事だけど。
「ルーラ」
もう一度、今度はさっきより近くで呼ばれる。さっきより近くて、少しだけ不機嫌そうな声だった。
「…なぁに?」
「なに、じゃないよ」
雨の音がぴたりと止んで、火傷しそうなほど熱い手の平が頬に触れる。驚いてびくりと体を揺らしたら、声の不機嫌さが増した。
「冷たい」
「…そう?」
「死人みたいだね」
「そんなに私の事殺したいの?」
「殺されるような事してる自覚は?」
「死なない程度になら」
「…よく言うよ」
確かめるように濡れた髪を何度か梳いて、リドルは杖を抜いた。
「いい加減目を開けなよ」
抜く、気配がした。
「でないと乾かしてあげない」
「このままでいい、って言ったら?」
「真水の次は熱湯のシャワーを浴びたい?」
「…きゃあ」
「でも、君の寝相が悪いのは本当の事だろう?」
まだ言うか。
「ちょっと寝返りを打ち過ぎるだけじゃない」
「一晩に三度もベッドから落ちそうになるのが、ちょっと?」
「…なによ」
「なんでも。――これから買い物に行かない?」
「いいけど…何を買いに?」
「ビデオカメラ」
「私の寝相を撮るためなんて言ったら今夜は部屋に入れないからね」
「明日の朝、頭を抱える君の姿が目に浮かぶよ」
まだ言うか。
「ちょっと寝返りを打ち過ぎるだけじゃない」
「一晩に三度もベッドから落ちそうになるのが、ちょっと?」
「…なによ」
「なんでも。――これから買い物に行かない?」
「いいけど…何を買いに?」
「ビデオカメラ」
「私の寝相を撮るためなんて言ったら今夜は部屋に入れないからね」
「明日の朝、頭を抱える君の姿が目に浮かぶよ」
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