「――私をおいて逝く気か」
血を流す右目に痛みはない。ただ視界は赤く濁っていて不快だ。
「アッシュ・オフィーリア」
床に伏したアッシュは既に呼吸を止めている。死んでいるのだ。サラザール・スリザリンによって造られた人造人間の最高傑作は、もういない。
「…馬鹿が」
いくら呼んでも応えない。何をしても応えない。――死ぬというのはそういう事だ。だからもう、この男に用は無い。力は残された。力さえあれば私の望みは果たされる。契約違反は無い。――なのに血が止まらないのは、何故だ。
「――アリア」
「ルーラ…」
「何があったの?」
「マリアに殺された」
「マリア、って…アッシュと同じホムンクルスの?」
「あぁ」
「…哀しいの? アリア」
「わからないんだ」
「取り戻してあげましょうか」
「……どうやって?」
「引きずり出すのは私の専門よ」
「死者は蘇らない」
「さぁ? どうかしら」
「出来るのか」
「貴女が心の底からそうなる事を望んでいればね」
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「ルーラ」
「なぁに?」
「ありがとう」
「気にしないで。善意じゃないから」
「わかってるよ」
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「天邪鬼が二人」
「仲良くしてたら誰かさんが妬くじゃない」
「誰の事だろうね」
「誰の事でしょうね」
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「この、大馬鹿」
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私の殺されたハートレス。
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しめやかな聖夜を貫いた感情が私を揺り起こす。
「行くの?」
その感覚を気のせいだと切り捨てる事は出来そうになかった。
「呼ばれちゃったから」
物理的な距離も、隠れ家の結界も超えて真直私の胸に飛び込んできた哀しみを放っておく事は出来ない。作り物の絆に縋っているのは私も同じだから。
「一緒に来てくれる?」
「…いい加減、聞く必要ないって気付きなよ」
どうしたって、見捨てられない。
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「このままで来たの、やっぱりまずかったかしら」
「仕方ないよ。いくら君だってあの封印をしたままホグワーツに姿あらわしするなんて危険すぎる」
「四人一遍だったし?」
「それもあるよ」
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