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「お前、当主にならないか」

 揺るがない視線に至極真面目な表情。醸し出す雰囲気にさえ冗談の色はない。素面で言っているのだとしたら、相当なものだ。その言葉の意味する所を、よもや当主自身が理解していないはずもないだろうに。

「本気?」
「勿論本気だ。お前にその気があるなら全部くれてやる」

 そもそも、緋星が当主になる事は不可能だ。

「当主を決めるのは銀の不死鳥だって聞いたけど」
「アズールが選ぶのはあくまで銀石だ。今までは緋星の不在が銀石を当主たらしめていたに過ぎない」

 当主の証とされる銀の不死鳥は契約者を選ばない。表向き誓約者と契約者、両方の力を持っている事になっていても、私の本質は契約者だ。最強の誓約者を見定め禁書を託す事を使命とする銀の守護獣が選ぶはずはない。

「それは分かるけど…それで貴女は何を得るの?」
「自由だ」
「…私が当主になったら、シルバーストーンは好きにして良いのね?」
「当然だ。当主とはそういうものだろう」
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