伸ばされたのはほっそりとした少女の腕。同時に聞こえてきた羽ばたきは、梟のそれよりいくらか鋭い。
舞い降りたその鳥が何なのか、理解すると同時に体が震えた。
「おい、ルーイ」
「わかってるよ、ルーク」
あれは《クロウ》だ。
「「クリムゾンスターがいる」」
声を揃えると同時に、俺達は歩き出していた。
...091222.
「あ、やべ」
捕まったわ。――誰にともなく一人ごちて、ジェノスは首を傾ける。
「大丈夫か? アシェラ」
「死んだ」
「悪い悪い」
アシェラは首元を煩わしそうにさすった。
「良かったな、便利な能力で」
ジェノスのペルソナ――アシェラ――の能力は「増やす」事。
...091222.
クィレルが倒れた瞬間アシェラの気配が薄れ、双子が色めき立つ。
「トロールの絞殺には自信ないわ」
私は至極真面目な声で嘯く。
今を手を出す気はないので、そのまま監督生の指示に従って席を立った。
「「自信ないだって」」
くすくすと笑い合う双子に背を向け、リドルと手を繋ぐ。
「勢い余って刎ね飛ばしそうだから」
哀れ、クィレル教授は人混みの下。
...091225
真夜中に意図せず目が覚めてしまった時は、ふらりと寮を抜け出す事がある。
月のない夜はどうしても気分が落ち着かない。
「あんまりはしゃぐと封印が弾け飛ぶよ」
きっと魔力を無理矢理抑え込んでいるせいだ。溢れる魔力が、捌け口を探して体中を駆けずり回っている。
「大人しくしてたらそれこそ弾け飛ぶわよ」
...091225
まどろみの心地良さに縋り付いて半日寝倒した。いつもならリドルが起こしてくれるのに。
「……あたまいたい…」
こめかみにずきずきと嫌な痛みを覚えて三十分。じっと痛みをやり過ごしている間に赤らんでいた室内は藍に没した。
急に寒さが訪れたような気がして、上掛けにもぐる。
このままどろどろに融けてしまったら、どうしよう。
...091225
温もりがすり抜けていく夢を見た。
リドルは真実私のペルソナというわけではなくて、ただ私のペルソナであるかのように振舞っているだけだ。黒の指輪を誓約者とペルソナにある《繋がり》に代えても、私たちの魂は同一にして不可分にはならない。リドルの手はいつか、私の手を離す。そしてきっと、私も。
私が誓約者でなく、リドルがペルソナでない限り、それは絶対に避けられない未来だ。私たちはいつか分かたれて、元に戻る。全てが正常に。リドルが私を甘やかすのはそうする事を刷り込まれているからだ。彼の本心はどこにもない。
だからいつかきっと、私たちは分かたれて元に戻る。
...091225
「何が見える?」
「閉心術使ってるから別に何も」
「ちょっと、」
「冗談だよ」
「で、本当のところは?」
「…秘密」
みぞの鏡の前にて。
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