最後までリボーンたちに見せず、未来に置いてくることもしなかったせいで私の雲鴉は匣型のままだった。「匣兵器」というくらいだからそれが正しい形だと私は思っているけど。ポケットに入れっぱなしというのも正直邪魔臭い。
角張ってるし。
「…使っとけばよかったかな」
かと言ってこんな匣、使い所がなかったというのが正直なところ。私にとっては好ましくても、基本生肉しか食べない雑食性の匣なんて沢田がいい顔するはずないし。匣の性質上、このまま知られないでいた方が都合良いのも本当のこと。
委員会仕事も趣味のあれこれも一段落して、時間の空いたおやつ時。屋上の塔屋に上って開こうとした雲鴉の匣は、炎を近付けるなり熱に耐えかねたようどろりと溶けた。
「うわぁ…」
匣どころか《六道眼》の指輪まで道連れだ。全部溶け落ちてから思い返してみれば、むしろ匣の方が指輪の道連れにされたような気がしないでもないけど。
「垂れてますよ」
いつの間にか現れていて、手元を覗き込んでくる青猫の言う通り。溶けた匣と指輪は一緒になって私の手からぽたぽたと垂れ落ちていった。
冷たくも温かくもない鈍色の、金属じみた光沢を持つ液体がコンクリートの上へ静かに広がっていく。
「というかこれは大丈夫なの…?」
指先に残っていた最後の一滴まで綺麗に落ちきって、私の手には何も残らない。
「随分綺麗に混ざりましたね」
「匣と指輪が?」
「それとあなたの血。――こうなる直前、何を願ったんです?」
「何、って…」
確かに「もう少し持ち歩きやすければいいのに」と思いはしたけど、それはあくまで「思った」だけだ。アリスに確と願ってはいない。
「ちょっと考えただけよ?」
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