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 クリスマス休暇初日。周囲とは別の意味で浮かれていた私を、クロウの一言が現実へと引き戻した。

「アッシュ・オフィーリアがいない?」

 小難しい内容の本ばかり詰め込まれた本棚に囲まれ、滅多に人の来ない図書館の特等席。リドルはおらず、人の姿をしたクロウと私以外周囲に人の気配はない。

「確かなの?」
「はい」

 好ましいはずの静寂が、この時ばかりは少し恨めしかった。

「……」

 指先にかけたページの角がはらりと落ち、既に目を通し終えた項目を意味もなく見つめながら、私は内心鋭く舌打ちする。
 指輪を介して、リドルが近づいてきていることには気付いていた。

「探せる?」

 鏡は、ある。

「それが命なら」
「必ず見つけ出して」

 時間だって十分に残されている。焦る必要はない。今は突きつけられた問題を解決することだけに意識を割いて、全てはそれが解決してからで事足りる。

「御意に」

 なのに何故だろう、酷く気が急いた。一瞬の遅れが命取りになるような気がして、意図せずして魔力が研ぎ澄まされる。
 クロウは席を立ち、一礼して去った。

「――落ち着きなよ」

 入れ違いで現れたリドルがわざとらしく息を吐く。
 わかってるから。――広げた本を遠くへ押しやり、私は机に突っ伏した。

「僕は君が彼女のことを気にする理由は知らないけど、気にしてしまう理由なら知ってるから言うんだけどね、」

 ちょっと神経質になりすぎだと思うよ。

「君なら大抵のことは力で解決できるんだから、少しはそっちに頼ってみたら?」
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