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「聞かれる前に言っておくけど、私は親切で倒れた君を運んであげたんだからね? こういう言い方は好きじゃないけど、わざわざ君に害がないよう気をつけながら魔力も分けてあげたんだ」
「だから天使の歌くらい大目に見ろと…?」
「感謝しろとまでは言わない」
「……」

 あくまで悪怯れないフェアフリードに、ベルーフも喧しく言う気は失せた。限界まで使い果たしたはずの魔力が回復しているのも本当で、それがフェアフリードによってもたらされたものだとすれば、相当に手間のかかる作業だったことは想像に難くない。フェアフリードは魔属の生き物であるにも関わらず、天使同様聖属の力しか持たないのだ。そんなものを空っぽの器へ注がれてはどんな吸血鬼であろうと一溜まりもない。

「ところで、君が助けた少年だけど」
「少年…?」
「…違うのかい? 状況的にてっきりそんな感じなんじゃないかと思って一緒に連れて来てるんだけど――」

「あれは猫だ」

「なら君が助けた猫君。彼はあっちのソファーに寝かせてあるからね」
「あぁ…」
「もう平気? なんならもう少し魔力を分けてあげようか」
「いらない」

「なら私たちは帰るよ。――カノン」
「はい」

「フェアフリード」
「なんだい?」
「ありがとう」



「――どういたしまして」


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