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「お前、そろそろ誕生日だったな」

 暑さに負け、開け放していた窓辺に降り立った人影は唐突にそう切り出して、哀しいかなそんな登場に慣れてしまった私は驚くでもなく首肯した。

「そろそろっていうか、明日」
「プレゼントは何がいい?」
「…くれるの?」

 勝手知ったるなんとやらで、上がりこんできた真夜中の来訪者――イヴリース――は、冷蔵庫から麦茶を出してきてソファーに落ち着く。
 グラスは二人分用意されていた。

「何が欲しい?」

 注がれるのを待って手を差し出すと、逆に手招かれ、近付けば強引に隣へ座らされる。

「イヴリース」
「私以外で」

 十年間、私とイヴリースが出逢って以来ずっと繰り返してきたやり取りはまるで何かの《儀式》のようで、私はイヴリースが永遠に《彼女》の物であると知っているのに、そう言わずにはいれない自分の諦めの悪さに小さく笑った。
 《いつかは》という希望は存在しない。この件に関して、イヴリースが根負けして結論を覆すことは絶対にありえなかった。

「じゃあ使い魔とか」

 私は私で、「あなたのほかには何も要らない」なんて可愛くうもウザったい正確の持ち主ではないから、そこそこに多望だ。

「使い魔?」
「うん。家事とかもしてほしいから人っぽいのがいいなぁ」

 イヴリースが《ほぼ》全能であることも知っているので遠慮もしない。

「家事ってお前…」
「最近暑くて動くのが億劫」
「…まぁいいか」

 暫く呆れ顔で私を見ていたイヴリースは諦め混じりに頷いた。

「使い魔だな」
「いつくれるの?」
「明日中」
「やたっ」
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