「『共に来るか? 人の子よ』」
隙間なく抱きしめられて息が詰まる。苦しさに目が覚めて、何の嫌がらせだと溜息が零れた。流し込まれた人外の魔力は体の中で私の魔力と混ざり合い、力を増す。
「どうかしたの…」
夢見も目覚めも最悪で、気分もけしていいとは言い難かった。起き抜けに告げられた《あの日》の言葉も、この状況では意味を成さない。
誤魔化されてやるものかと肩を押しやれば、真夜中の侵入者はあっさり退いた。
「うなされていたぞ」
「嘘吐き」
部屋の闇は深い。朝は遠く、ぼんやりと周囲が見えているのは注ぎ込まれた魔力のせいだ。
「うなされるような夢じゃなかった」
「そうは思えないな」
「リーヴ、何しに来たの」
思ったよりも取り込んだ魔力が多い。――起き上がると同時に酷い眩暈に襲われて、思わず舌打したい衝動に駆られる。リーヴの前でなければ確実にしていた。
「行くな」
「…任務のこと?」
「二度目はないぞ」
「……わかってるわよそんなこと…。あの時は運がよかった」
「お前じゃない」
「…はっきり言ってくれないとわからないんだけど?」
普段ならこの少ないやり取りで彼の言わんとすることを理解していたかもしれない。けれど今は頭が思考することを放棄していた。早く寝なおしたいと、気を抜けば体を重力に持っていかれそうになる。
「お前は私のものだ」
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