緩やかな上昇を経て、覚醒。
満ち足りた闇の中、垣間見た月は鋭く目を焼いた。
「――ティア」
身じろげば――ジャラリ――重く尾を引く鎖。冷たい手触りをなぞって嘆息。
「私を呼んだ、あなたはだぁれ?」
ゆらゆらと頼りない月光が周囲を照らしていた。
「ティア・グランド」
「はぁい」
声のする方を見ても、そこには闇があるばかり。ほんの隙間から差し込む月光は僅かだった。むしろそのせいで闇が濃くなっている。
「目覚めてしまいましたネ」
「そんなつもりはなかったのに」
「這い上がってくるのですカ?」
「こんなにも雁字搦めなのに」
ティアは歌うように笑った。クスクスと、おかしそうに自分を地面へと縫い付ける鎖を持ち上げては落とす。
「嗚呼、私はなんで目覚めてしまったのでしょう」
応える者はなく、紫水晶色の鎖だけが彼女の傍にいた。
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