胸の高さに浮いた黒い《魔法書》が、ぱらりと独りでに捲れる。
「黒の書第十二項、風[ウィンド]」
手にした杖は狂いなく振るわれた。
「風よ、逆巻け」
ぎゅるり。
〈――そこまで!〉
頭の上から降ってきた《試験官》の声に、暁羽[アキハ]・クロスロードは杖先を上げた。
「フィーネ」
終了を告げる言葉と共に《マナ》を閉ざせば発動直前の魔法は無力化され、魔力の余韻だけが残る。
「完敗です」
ガラガラと崩れ落ちる《盾》の魔法を前に、蒼燈[ソウヒ]・ティーディリアスは諸手を上げた。
「魔法を使うまでもなかった?」
「子供だましでもしないよりマシでしょう」
「バレバレだけどね」
「……」
勝ち誇った笑みを浮かべ、暁羽は《黒の書》を閉ざす。
試験中封鎖される出入り口はいつの間にか開いていた。
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