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 黒一色で塗り潰された世界には、沢山の危険なモノがいた。

(逃げなきゃ…)

 漠然とした恐怖に追われ、私は走り出す。右も左も分からない黒の中では、そうするほかに自分を保てる方法が思いつかなかった。





 恐怖が来るよ!





「――――」

 置き去りにされていた肉体に精神が戻り、魔法陣が収束を始める。

「リー、ヴ…?」

 肉体と精神が完全に同調するのを待たず声を上げた暁羽は重そうに首をもたげ、訝しげにこちらを見やった。

「出てきたの?」

 答える代わりに頷いてみせると、片目を覆うよう頭に手を当て、大きく首を振られる。

「私は大丈夫だから」

 到底そうは見えなかったが、思ったままを口にしたところで聞き入れられることがないのは火を見るよりも明らかだった。確かに、常人と比べれば目を瞠る回復の早さではあるのだから。

「あのエルフを、連れて行くのか」
「えぇ」
「それがどういうことか、分かっていて言っているのか」
「私だっていつまでも無知で非力な子供じゃない。エルフを連れて旅をすることの難しさくらい、ちゃんと分かってるわよ」
「……」

 酷く的外れな答だった。結局の所、暁羽は私の言いたいことなど何一つ理解してはいないどころか、己の実力さえも把握しきれてはいないのだ。

「あのエルフは危険だ」
「…リーヴ」
「あのエルフは「リーヴ、いい加減にして」

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