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 例えばそれが《枷》であったなら。堪えられなかっただろうと、リーヴスラシルは考える。そしてそれを、リーヴもまた分かっていたのだと。
 だからリーヴは、リーヴスラシルに《鈴》をつけた。首輪でもつけてどこか適当なところに繋いでしまった方が余程手っ取り早いにも関わらず。他でもないリーヴスラシルでさえ、立場が逆であればそうしていただろうに。
 四六時中誰かの動向を気にかけ――けれど結局は、その行動を力尽くで止めてしまうこともできずに――振り回され続けるなんて、きっと酷く神経がすり減る行為に違いなかった。

 野放しにされている――けれど、けして見放されてしまったわけではない――という事実に、リーヴスラシルはリーヴの愛を感じていた。愛されている自分を実感できて、変わることのない気持ちを確認するために奔放な振る舞いを敢えてして見せてしまうくらいに。
 リーヴスラシルが城を出た途端にそれをリーヴへ伝える「鈴」くらいなら――多少不便に感じることはあっても――愛故のものだと思うことができた。ただ鳴るだけのそれが、実害としてリーヴスラシルの自由を奪うことは絶対にありえないのだから。

「よろしかったのですか?」

 最早リーヴに悟らせることなくウトガルズの城を出られないリーヴスラシルが、それでも大人しくしているようなことはない。ちょくちょく抜け出しては、ひとしきり遊びまわった後で連れ戻される、というようなことを最近は繰り返していた。
 例外は、城下へ繰り出すのに供としてビューレイストを伴っているような時。突き詰めて言えばリーヴの「一部」でしかないビューレイストが付き添っていれば、リーヴも余程帰りが遅くならない限り大人しくリーヴスラシルの帰りを待っていた。

「いいのよ」

 だから本当は、黙ってこっそり抜け出す必要などありはしないのに。リーヴスラシルはリーヴをひやりとさせるのが楽しくて、わざわざ断りもなく勝手に城を抜け出す。
 そんなリーヴスラシルのことを、ビューレイストも強くは咎められないから、いつまでだって、リーヴスラシルが飽きるまで同じことが繰り返される。

「目を離したら私がどうするかなんて、リーヴは知ってるんだから」

 分かっていて目を離す方が悪いのだという理屈。ビューレイストは「それもそうだ」と簡単にリーヴスラシルへ迎合して、うきうき出かける大切な姫君に付き添った。どのみちリーヴスラシルの満足以上に、リーヴが心配をする意味などない。誰もその存在を害せるはずなどなかった。既に《王》の寵姫であると知らしめられているうえに、本人の生まれ持った魔力も良質にして豊富ながら、いざとなればリーヴの《マナ》から魔力を引き出して使ってしまえさえするのだから。実質的には巨人の《王》その人がふらふら出歩いているのと同じことだった。
 だからこそ、城下の巨人たちはリーヴスラシルを歓迎する。そしてその存在を害する愚かしさと危うさを理解してもいた。
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