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 銀髪銀目の美丈夫と、銀髪藍目の美丈夫――異なる色の瞳以外、あとは鏡に映したよう瓜二つな顔を見比べて、はてと首を傾ける。

「双子?」

 私の言葉に顔を顰めたリーヴとは正反対に、初めて会うのに見慣れた顔の藍目の男は、にこにことした笑みを崩さなかった。
 リーヴが割と無愛想な方だから受ける印象は随分変わるけど、やっぱり二人の顔は驚く程によく似ていた。リーヴのそっくりさんはもう一人知っているけど――ビューレイストは女だから――男女の違いというのは結構大きい――と、そこまで考えてようやく気付いた。

「あ」

 なんだそういうことかと、分かってしまえば酷く間の抜けたことを言ってしまったものだと思う。
 リーヴのもう一人のそっくりさん――ビューレイストは、正真正銘「もう一人」のリーヴと言える存在だった。リーヴの《マナ》を分けて「作られた」二人目。誰よりも何よりも近く、たった一つの魂を共有する存在。

「あなたもリーヴだったの?」

 きっとそうなのだろうと思った問いかけに、けれど藍目の男は「おしい」とリーヴを指差した。
 ちょっとだけ違う――と。

「そいつが僕だったんだよ」
「え?」

 虚を衝かれたのは一瞬で、すぐに「まぁ、そういうこともあるか」と納得することができたのは、深く考えることに意味がなかったから。そうする意義を、何一つ見出すことができなかったからだ。
 始まりがどちらであろうと、事実として今はリーヴが「主」。《印》と《マナ》を併せ持つ巨人の《王》は、最早リーヴ以外にありえない。たとえ始まりがどちらであろうと、この現実は変えようのないものだった。
 私がリーヴへ名前をつけたその瞬間に、命運は決している。誰でもない巨人の《王》は私のリーヴになったのだから、それ以前のことには意味が無い。

「それは災難だったわね」

 かつては巨人の《王》であったのだという男も、今や単なる「リーヴの一分」。それなら「私のもの」に違いなかった。私が対価を払って手に入れた、「全て」の一つ。

「まったくだよ」

 堪えた風もなく肩を竦めた藍目の男は、私の前へ唐突に跪いて頭を垂れた。姫へ額突く臣下のように、けして間違ってもいない遣り様で。

「僕はロキ。以後お見知りおきを、お姫さま」
「…その名前は知ってるわ」
「あ、そう?」

 畏まった所作から一転、けろりと立ち上がったロキはいかにも「意外だ」とばかりに首を傾げて見せた。そんなものがただのポーズでしかないと即座にわかったのは、「ロキ」という巨人の名前があまりに有名すぎたから。

「アースガルズを治める神の《王》オーディンと義兄弟の契りを交わした巨人って…まさか、あなたなの」

 それは、生粋の巨人でありながら神の一員としてアースガルズに住まうことを許された者の名だ。神は一方的に巨人のことを嫌っているがため、アースガルズへ足を踏み入れることさえ並の巨人では命取りとなりかねないものを、わざわざオーディンの宮殿まで出向いて行って無傷どころか、逆に気に入られてしまった稀有な男――それが、今私の目の前にいる。
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