「貴方はあのエルフのことどう思いまして? ノール」
「まだこの目で確かめたわけではないので、なんとも」
「見たって分かるわけありませんわ。私たちは賢者であって魔術師ではないのですから」
「ならどのような答をお望みで? 東の賢者殿」
ノールのおざなりな言葉にエイリークはペンを置いた。
「陛下はなぜ、あの魔術師に固執するのかしら」
写しかけの書類には栞を挟み、既に必要なくなった書類は手元から遠ざけ、必要なものを引き寄せながら、何も見ていないような目でノールを見やる。
いい加減に過去の資料を漁る退屈な作業にも厭きてきていたノールもそれに倣った。しばし休憩と、外した眼鏡をペンと並べる。
「皆の前ではあくまで公平に振舞っていますよ」
エイリークは口を噤み首を振った。
「…あの呼び名は渾名のようなもので、正式なものではありません」
「記録には残らずとも記憶には残りますわ。ともすれば胸に飾られる勲章よりも、それは重いものではなくて?」
「確かに…」
「わたくしは進言しましてよノール」
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