この国で一番大きな自然公園「アベリア」には、とても不思議なアパートメントがありました。
「アルヴェアーレ」――蜂の巣――と呼ばれるそのアパートメントは、名前の通り蜂の巣のような造りをしています。六角形の小さな家が、身を寄せ合い円を描いたような造りです。中央には、家四つ分開[ヒラ]けた中庭もあります。
アルヴェアーレは、誰が見ても素晴らしいアパートメントでした。
アベリアを利用する人々は一様に、アルヴェアーレの住人に憧れを抱き、羨望の眼差しを向けます。自分にとっては雲の上の世界だと諦めながらも、心のどこかで夢見ることをやめられないのです。アベリアの豊かな自然と、それらに囲まれた日常を。
そんな、誰もが羨むアルヴェアーレに住むことが出来るのは、本当に一握りの人々でした。アルヴェアーレを構成する家々は十一棟しかなく、その内の二棟は、住人なら誰でも利用することの出来る共有スペースですから、人が住むことの出来る棟はたったの九つしかないのです。
そして、その九つのうち一つ、「フィーシェ」と呼ばれる棟には、一組の「博士」と「助手」が住んでいました。
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