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 ――お前には名前があるだろうとあんたは言った。俺はそんなもの疾うの昔に失くしたと答えた。
「バカ言うな、外の人間なら親に貰ってるだろ」
「親は死んだ。だからあいつらのつけた名前はもうない」
 それは紛れもない事実だった。俺に名前をつけた親が死ねば俺は〝俺〟という鎖から解き放たれることが出来、俺の名を知る人がいなければ、俺が〝俺〟でいる必要はない。
「面白いな」
 それで俺が〝俺〟として生きてきた時間が消えてなくなるわけもないのに、俺はそう信じきっていて、またそうでなくてはならないと考えていた。
「なにが」
「お前がだよ、クソ餓鬼」
 そんな俺をあんたは嗤って、それでも手を差し伸べた。
「――来い」
 そして俺は、どういうわけかそんなあんたを心から拒絶できないでいたんだ――

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