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 暑くもなく寒くもない、ちょうどいい昼下がり、まどろんでいたジブリールは、不意に落ちた影に誘われるように目を開けた。
 柔らかな日差し、ジブリールの午睡を遮って、イヴリースが口を開く。


「おはようジル」
「・・・おはよう」


 そんなことを言うために、態々出向くわけがない。


「なにか用?」


 流した髪を梳かれることに心地よさを感じ、もう一度瞼を下ろしながら、ジブリールは尋ねた。
 イヴリースの指先が髪に絡み、微かなくすぐったさを伴って眠りを誘う。


「ちょっと出掛けてくるよ」


 まるで、彼女の触れた所から眠りが流し込まれているみたいに。


「どこへ?」
「おかしなことを聞くな」


 お前は知っているだろう? ――眠りがその色を増す。現実が、音を立てて沈んだ。


「ジブリール」


 緩やかに眠りへと引き込まれたジブリール。彼女にそっとおやすみのキスをして、イヴリースは硝子張りの天上を仰いだ。


「ゆっくりおやすみ」


 
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