「何から話しましょうか」
「あなた、どこまでわかってやってるの?」
「どこまで、とは?」
「…腹の探り合いをするつもりなら帰るわよ。面倒臭い」
「せっかちですね」
「わかりやすいのが好きなの」
「そうですね…」
「どこまで、という表現は正しくありません。僕はその時々、抗い難い力に従って行動しているだけですから」
「抗い難い力?」
「彼女は自分が抱える闇に無関心で、それがどれほど自分を歪めているか気付いてもいなかった」
「初めはそれでよかったんです。彼女は歪むことでようやく自己を保てているような人でしたし。その歪みも含めて魔女でしたから」
「彼女の誤算は、その闇――狂気、とも言えますが――を自分の中にだけ留めておけると思ったことです」
「二つで一つの眼を分け合った僕たちが、そう都合よく他人でいられるはずないんですけどね」
「まぁそんなわけで、彼女の闇は僕にも伝染しました。その闇は彼女が危惧していた通り僕の精神を引っ掻き回そうとしましたが、――これも彼女の誤算の一つです――同時に六道輪廻を廻った彼女の持つ膨大な記憶という名の情報をももたらしました。その中で僕は、その闇を上手くいけば無力化出来る方法を知ったんです」
「ボンゴレの…」
「えぇ。ですがそれだけなら、他に遣り様はいくらでもありました。知っての通り僕はチートな力を持っていますから」
「そうね。じゃあ何であんなまどろっこしい方法で、しかも今は囚われの身なの?」
「僕は元々デクストラ――左目、という意味ですが――と呼ばれていて、その呼び名を気に入ってもいました。ですがある日、気付いたんです。これからは六道骸でなければいけないと。――なぜなら、」
「それを彼女が望んでいたから」
「……――嗚呼、そういうことなの」
「とんだお笑い種ね」
「結局、変えることだって怖かったんじゃない」
「でも、抗えたんでしょう?」
「おそらくは。ですが抗おうとは思いませんでしたね。彼女が姿を消したのが丁度その頃だったんです。唯一と言っていい手がかりをみすみす捨てる気にはなれませんでした」
「そう」
「沢田綱吉の手によって六道眼に由来する闇を浄化され、当初の目的を果たしたあなたがまだ六道骸でありつづけているのも、同じ理由?」
「だからこうしてあなたと話しているんですよ」
「それで? あなたは私にどうして欲しいの」
「言ったでしょう」
「現状維持、ですよ。あなたにとっても悪い話ではないはずだ」
「あなたはそれでいいの?」
「僕の力はどうやっても彼女のそれを上回ることはありません。本気で逃げられたら見つけようがないんです。ですが現状が維持される限り、少なくとも側にいることは出来る」
「満足、とまでは言いませんが…充分です」
「殊勝だとこ」
「あなたにも覚えがあるのでは?」
「…えぇ、そうね」
「あなたの話なんて聞くんじゃなかった」
「それは了承ととりますよ?」
「少なくとも理由もなく放り出すつもりは端からないわ」
「ならいいんです。その眼があなたの利になることはあっても、害になることはないでしょうから」
「せいぜいそう祈ってることね」
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