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「名前は?」
「・・・沙鬼」
「部屋は?」
「初等部寮の三階、舞風暁羽の部屋の向かい」
「同室なのは誰?」
「一人部屋」



 隣を歩きながら指折り質問してくる暁羽を暫し見つめ、沙鬼は軽く息を吐いた。



「うん、まぁこのくらいかな」
「私はお前の何だ?」
「うん? 誕生日の日付的には姉かなぁ、同い年だけど」
「・・・」
「沙鬼?」
「なんでもない」



 人目を避けるようにこの街に来た。
 人目を避けるように寮に入って、数日後には、全てが整っていた。
 自分はこの巨大学園都市「彩光学園」の理事長であるリカコの孫娘――正確には本当の孫娘が拾ってきた養女――で、今日から初等部の3年に編入する。
 去年まではイギリスにいた。・・らしい。



「変な金持ちだな」
「私のこと?」
「他に誰がいる」



 天涯孤独だった私に家族が出来たのが暁羽に会った翌日。今まで過ごしてきた時間と記録が出来上がったのはさらにその翌日。
 今朝暁羽に渡された資料の中にある電話番号に連絡すれば、私がイギリスに居る間暮らしていた家につながり、そこの家族が「また遊びにおいで」と温かい言葉をかけてくれるらしい。勿論、英語で。



「私を助けてお前になんの利益がある」
「それ、昨日も一昨日も聞いた」



 暁羽は右手に持っていた鞄を左手に持ち直し、しびれた右手をヒラヒラと肩口で振る。



「でも私はまだ答えを聞いてない」
「私が答えてないからね」
「はぐらかすな」



 怒気をはらんだ声と共に立ち止まった沙鬼を顧みる暁羽の顔に、表情はなかった。



「っ」



 まるで人の手によって造られたかのような、計算されつくした完璧な無表情。



「それはね、」



 唇が動いていないような錯覚すら覚える。
 そうだ。これが、あの時私が暁羽の手を取った理由。
 命が惜しかったわけじゃない。だた、逆らえなかっただけ。



「銀の狼が欲しかったから」



 漆黒の瞳に逆らう意思を奪われた。



「傷ついた獣を手懐けるのも、一興だと思っただけ」



 ふいと逸らされた視線に思わず肩の力を抜く。
 ふとした瞬間垣間見える支配者の顔に出逢う度戦慄した。そしてこれからもし続けるのだろう。



「・・・そうか」



 私は鎖で繋がれてしまった。だからもう二度と逆らう事は許されない。









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