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 透き通った空。頬を撫でる心地いい風。
 ジャラジャラと全身につけたアクセサリーが歩くたび揺れた。



「すごーい」



 極めて平坦な、声。



「ねぇリドルぅ?」
「・・・その気持ち悪い話し方止めてくれるかい?」
「ひっどぉい」
「ルーラ」



 いい加減本気で怒り出しそうなリドルの声を耳に留め、ルーラは貼り付けたような笑みを拭った。



「リドルはこういう笑い方好きだと思ったけど?」



 からかうように紡がれた言葉に軽く肩をすくめ、リドルは進行方向に向き直る。



「ルーラのはわざとらし過ぎ」



 ひっどぉい。
 けれどこの声には自分でも鳥肌がたった。










「それで?」
「?」
「さっき何を言おうとしたの?」



 どこにでもいるようなマグルの格好で二人並んで歩く。
 勿論行き先は彼の「漏れ鍋」、ダイアゴン横丁への入り口があるパブ。



「あぁ、さっきのね」



 ルーラは何気なく首を巡らせた。



「ただちょっと気になっただけ」
「何が?」
「だってリドル、リドルのままだから」
「・・・あぁ」



 見つめる先には真紅の瞳と漆黒の髪。
 リドルはただ進みすぎた時計の針を巻き戻すかのように若返っただけ、だからきっと学生時代の彼を知る人が現われれば気付かれてしまうだろう。――彼は偽名を使う気もないと言っていた。



「そのことなら心配ないよ」
「何で?」



 そしてその〝誰か〟は確実にホグワーツにいる。



「彼女がうまくやってくれたらしい」
「うまく?」



 というか、いなければならない。
 彼は所謂「光」に属する魔法使いたちにとって、なくてはならない存在なのだから。



「誰も僕がトム・リドルだとは気付かないように」
「・・・ふぅん」
「わかってないでしょ」
「9割方」



 彼の名はアルバス・ダンブルドア。



「要はリドルが言った「僕は君の知ってるトム・リドルであってそうじゃない」っていうセリフの、「そうじゃない」ってとこだけ強調して無理矢理頭に刷り込んだ・・って感じ?」
「わかってるじゃないか」



 よく出来ました。
 そう言わんばかりに頭を撫でてきたリドルの手を払い落とす事も出来ず、ルーラは顔を顰めた。



「何この子ども扱い」
「子供だろ?」
「リドルだってガキのくせに」
「そんな事言ってると塞ぐよ」
「・・・」



 降参の意を示すように両手を挙げ肩を竦める。
 取り合えずリドルがリドルだとばれないのなら問題はない。



「リドルってやっぱり黒いよね」
「スリザリンだからね」



 だって初めから目をつけられてちゃ何もすることが出来ない。



「私も多分スリザリンかな?」
「十中八九」
「色々病んでるしね」



 私は全てを思いのままに進める、今度こそ。










 遥か頭上を白い烏が横切った。









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