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「寝ないのか?」
「うん」



 見上げた月に手を伸ばしても届く事はない
 あれは見た目よりもずっと遠い所にあって、どうやったって俺達の手に入りはしない



「ねぇ、ユエ」
「ん?」





「あれをちょうだい」





 けれどお前は望むのか



「・・・あぁ」



 蝋の翼で太陽へと羽ばたいた勇者は翼を焼かれ地に堕ちた



「ちょっと待ってな」
「うん」



 精巧な細工のグラスを手に取り、指を弾き鳴らせば現れる水
 重みを増したグラスを窓枠に置き、背後のテーブルに何も言わず手をついた



「ありがとう」



 お前が堕ちてしまわない様に、俺はここに月を飼おう
 うっとりと頼りなく揺れる月を見つめるお前は、すくなくとも俺の傍にいる
 月を手に入れられないことには変わりはない。けれど――



「どういたしまして」



 物欲しげ月を見上げるお前は、いつかあそこに帰ってしまいそうだから
 お前がここにいられるよう、俺はここで月を飼おう 
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