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「蘭、ちょっといいか?」

 控えめなノックの音がして、扉が開く。

「縁談の話以外なら構わないよ」
「縁談?」

 入室の許可も得ず入ってきた相手の反応を見て、蘭は首を傾げた。

「聞いてないの?」
「縁談話をか? 誰と誰の」
「……ふぅん…」

 どうやら本当に知らないらしい。――そう結論付けると、手元の書類から何枚か選び出して隅に印をつける。×印だ。
 《不可》の書類をまとめて分類用のケースへ放り込んだ蘭は、憑き物が落ちたような清々しい笑顔を訪問者に向けた。

「それで?」

 訪問者――華月――はそんな蘭の反応を訝しんだが、表立って問いただすようなことはしない。

「仕事で出かけるから、後を頼む」
「わかった」

 後はいつものやりとりで、程なく華月は生徒会室を後にした。

「そうか、まだ聞いてなかったのか…」
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