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 ぶれいこうぶれいこう! ――呂律の回らない声で叫びながらワインのボトル片手にテーブルの上でストリップショーを始めようとした夕凪を夕立が強制退場させるのを見ながら、あたしは蒼燈の後を追ってパーティーの会場を後にした。
 あたしが「姉さんに何も言わないで出てきちゃったけど大丈夫かな?」、なんて思ってる間に蒼燈はどんどん先に進んで、あたしは置いていかれないよう半ば走るようにその後を追う。でもコンパスの差があって、追いついたと思って気を緩めるとすぐにまた二人の距離は開くから、あたしはその度、泣きそうになりながら今日は遠い蒼燈の背中を追いかける。
 何故か「待って」とも「置いてかないで」とも言えず、自分勝手な蒼燈を罵倒する言葉も思いつかなかった。

 そして闇が怖い。

 その恐怖が「後継者」としての守りを失ったことによるものなのか、冷淡な世界によるものなのか、黙って出てきてしまった罪悪感によるものなのか、昨日見た映画のせいなのかあたしには判らないけど、この暗闇の中置いていかれたら本当に苦しくて死んでしまいそうだ。こんな所に置いていかれたら、怖くて、怖くて、怖くて、きっとあたしは死んでしまうんだ。



「そ、ひ・・」



 なのに蒼燈は立ち止まっても、振り向いてもくれない。ただ黙々と――あたしと一緒じゃなく、一人で歩いてる時と同じ速さで――歩き続けるだけ。まるであたしなんか存在してないみたいに歩きなれた帰路を辿る。
 怖くて、寒くて、心細くて、あたしはもう殆ど走りながら蒼燈に並ぶのに、いつも鬱陶しいほど気の利く蒼燈はあたしの手を握ってはくれない。同じ速さで歩いてくれない。話しかけてくれない。


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