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「――破却せよ」


 放たれた言葉は、凄絶な力となって群がる妖を蹴散らした。


「遅かったな」
「・・白銀の華[カ]は我が魂を辿り歪んだ闇より疾く還る。我が魂を蝕みし闇の名の下に疾く還れ。たゆたいし闇は汝に沿う。疾く還れ。汝が意志は我が魂に刻まれている」
「無駄だ」


 二匹の妖狼と共に境内へと降り立ったアサギは白鬼や異邦の妖などには目もくれず、矢継ぎ早に呪を紡いだが、イザを取り巻く呪縛を打ち砕かんとした力は暁闇によって無効化される。
 

「破却せよっ!」


 苛立ちと共に放たれた言葉が大気を揺らした。
 ビリビリと肌を刺す怒気に、白鬼はほくそ笑みながら暁闇を掲げる。


「じきに堕ちる」
「させないわ」
「人ごときが、我に牙を剥くか」


 印を結び、振り下ろされた腕の先で瞬く間に妖たちが塵と化した。


「堕神風情に彼女を穢させはしない」


 駆けつけた十二神将たちの言葉さえ、彼女の耳には届かない。
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