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 竜から人へと擬態したイヴリースは暫く何もない空中に立ち、死の森の向こうを見つめていたが、不意に小さく笑みを零すと、滑るようにバルコニーへと降り立った。


「ここからの景色も見飽きたな」


 それが傍らに立つ藤彩への言葉なのか、単なる独り言なのか、問う者がいれば彼女は答えただろう。最愛の愛し子への言葉だと。
 そして、誰もが思わず見惚れてしまうような笑みを浮かべるのだ。


「行くの?」


 藤彩の問いにイヴリースは答えなかった。


「世界が最も美しい瞬間を知っているか?」
「・・・私は貴女ほど永く生きてはいないわ」
「だがいつか目の当たりにするだろう」


 見上げた空の彼方で、朧な太陽が陽炎のように揺れる。


「たまには飛ばないと、飛び方を忘れてしまいそうだ」


 それは、あたかも世界の終焉を思わせるような光景で――


「来るか?」


 嗚呼なんて絵になる生物なのだろうと、藤彩は感嘆と共に息を吐いた。


「連れて行ってくれる?」
「もちろん」


 苦笑混じりの問いに彼女の契約竜は快く応じ、差し出された手を取る。


「それをお前が望むなら」
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