「大丈夫だから」
それは、私があの子に対して吐いた初めて嘘。
今から行われる実験の後、可能性の上で私がどうなるかは予め――きっと本当はいけないことなのだろうが――ルナさんに聞いていた。それでも私は、大人たちの自己満足でしかないこの実験につきあうことを承諾した。
本当は逃げたかっただけなのかもしれない。私は、もう誰が苦しむ姿もみたくなかったから、一番生き残る可能性の低い実験を選んだ。多分、きっとそう。
「ごめんね」
閉ざされた扉の向こうに呟くと、前を歩くルナさんが振り向いた。
「貴女なら、こちら側に回ることも出来たでしょう?」
彼女が立ち止まったものだから、私もつられて立ち止まる。
彼女の言うことはもっともだ。私は今15で、そうしようと思えば「被験体」という立場から逃れることが出来た。
「私は、子供のままでいいです」
「そう・・」
でもあえてそれをしなかったのは、あの子の傍にいたかったのともう一つ。
私は、たとえ自分がどうなろうと今まで一緒に育ってきた仲間を「物」として見ることが出来ないから、こちら側に残ることを選んだ。
「貴女は強いのね」
「あの子を守れるのは、私一人でしたから」
あちら側に、私の居場所を用意していてくれたルナさんには悪いと思っている。
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