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「全く・・」



 あの夢で彩花と会えなければ、きっと蒼燈は目覚めることが出来なかっただろう。
 国を失った哀しみ、怒り、己が犯した過ちに対しての後悔――時塔蒼燈を動かしていた全て――は、「時塔」が与えられた罪とともに持っていってしまった。
 自分達をこんな風にした暁羽にしてみれば、「蒼燈」は必要な不要だからして目覚めなければそれでも構わず、どこか適当な場所にでも放り込んでおくつもりだったらしい。――湖とか、言っていたか。



「いい加減泣き止みませんか?」



 けれど暁羽の予想に反して、蒼燈は目覚めた。
 それもこれも、全てあの夢の中で立てた誓約を守るためだ。
 例え彩花が完全な夢だと思っていたとしても、その誓約があったからこそ蒼燈は目覚めた。蒼燈にとってあの誓約は絶対、そして唯一。



「彩花、」



 生きることに理由を求めたのは蒼燈も同じだ。彩花に「探すな」と言えた義理ではない。
 言い訳じみたことを言うとすれば自分は「理由」のおかげでここにいて、彩花は「理由」を探すためにここにいる。その差は大きいと、蒼燈は思っている。



「僕はいい加減貴女の笑った顔が見たいんですけどね」



 嗚呼、でも・・同じかもしれない。
 結局は僕も貴女も「理由」に縋り付いていなければ一人で立っていることも出来ない。





 脆弱な愚者だ。




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