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「――、」



 女は力を揮い損ねた。それは完全に予想外の出来事だった訳ではない。ただしさすがの彼女でも今この状況でそれが成されるとは思ってもみず、また、その程度には唯一己の力を無効化できる存在の分別を信じてもいた。
 この状況だからこそ、と言えないこともないが、あんまりだ。



「嘘だろ、おい・・」



 故に零れたのは異様に覇気のないセリフ。次いで魂まで吐き出してしまいそうな溜息。



「X、さすがにこれはあんまりだろう・・・」



 世界が暗転しようとしていた。


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