酷く暑苦しい夜。だから全てが夢だと、どうして言えよう。
軋むベッド、波打つシーツ、鳴り止まない嬌声。全てがこんなにも現実味を帯びている。夢だなんて、嘘だ。
「これは夢ですよ」
僕と同じ顔、少し高い声をした女が耳元で囁く。甘く。冷たく。酷く、緩やかに。謳うように。
頭[カブリ]を振った拍子に汗ばんだ髪が頬を覆った。それを丁寧に除けながら、女は笑った。
「だから、ね?」
僕と同じ顔、少し高い声をした女が耳元で囁く。甘く。冷たく。酷く、緩やかに。枷を取り払うために。
諦めなさい。落とされた優しい口付けが、これは夢ではないのだと、言い聞かせ続けた努力を泡とする。
「僕を見て」
全て暑苦しい夜が見せた悪夢ならばよかったのに。
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