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 ツートンカラーの十字架。普段は首から下げているペンダントトップは今だけ手の中にある。

「(――ルーラ)」

 しゃらしゃらと余る鎖で手首に巻きつけて。

「やめろ!!」

 やるべき事は分かっていた。

「アクシオ」

 振り上げた杖はバジリスクの毒牙から《日記》を救った。


---


「トム・マールヴォロ・リドル」

 にっこり笑って、突き出す短剣に刃はなかった。

「あなた目障りだわ」


---


「御託はいいよ」

 バシッ、と弾けた音に衝撃が重なった。

「時間の無駄だ」

 使えるはずのない魔法。冷ややかに向けられた視線は鮮やかな紅色。
 《記憶》は戦慄した。

「お前は…!」

 ローブから見え隠れする手には赤く濡れた短剣。

「終わりにしよう」

 ぽたぽたと滴り落ちる液体は瞳と同じ色をしていた。


---


 突き立てた刃の中へ流れ込んでくるものがあった。吸収される、と言い変えてもいい。刺さるはずのない《石》の刃はほとんど実体を得ていた《記憶》の胸を違わず貫き、オリハルコンの柄は歪な魂を喰らい尽くさんばかり。呑み込んで、閉じ込めた。
 それでおしまい。
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