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 《姿くらまし》は必ずリドルと一緒でなければいけない。絶対に。そうでなければどこへも行けはしなかった。私は。私が私であることさえ保てない。不完全な存在だから。
 二人でようやく一人分の魂。

「ねぇ、リドル」

 指輪はただの証でしかなかった。

「楽しいわね」

 そして本当は、私の魂なんてほんのささやかにしか存在しない。私の「生」を支える魂は、その全てと言っていい程がリドルの持ち込んだ、リドルの魂。つまりトム・マールヴォロ・リドルの。

「楽しくて仕方ないわ」

 己の魂を割いてまで永遠を手に入れようとした愚か者。ヴォルデモート卿の魂で、私は生きている。だから生かさなければならなかった。まだ生まれてもいない私自身を。リドルの手を借りて。

「さぁ、行きましょ」

 ハリーにつけた《目印》の反応はとうにホグワーツを離れていた。
 私の前に実体として立っていたリドルは姿を消し、指輪の中へと戻る、ずるずると侵されていく感覚へ逆らわずにいると、身体の支配はあっという間にリドルの下へ渡って行った。

「リドルの館へ」
「(呪いをかけに!)」

 私の声。私の身体。私の魔力でリドルは望みを唱える。サラが特別に許してくれたから。私たちの《姿くらまし》がホグワーツのまもりに妨げられるようなことはなかった。
 バシッ、と音を立てて芝地へ降り立つ。柔らかな着地。
 何気なく持ち上げた杖先から飛び出す閃光は、いとも容易く裏切り者の意識を奪った。不審な音に振り返る暇さえ与えない。
 どさりと倒れ込んだ尻目に大鍋へと近付く。

「父の骨。敵の血」

 鍋の中身は__色をしていた。

「始祖の呪縛、須く繋がれん」

 その中へ持参した薬瓶から銀色の液体をとろりと垂らし、杖を振る。
 立ち上がったペティグリューは意識もないままナイフを構えた。



 そうして、自ら腕を切り落とした痛みによって目を覚ます。命を削るような悲鳴も気にはならなかった。


---


 前触れもなく唐突に、姿を現し杖を振る。ルーラの目的が自分を助けることではないことを、ハリーは何故か初めから強く確信していた。
 思い返してみれば、ルーラが掛け値なくハリーの味方であったことなど一度としてない。なかったのだと、ハリーにはもうわかっていた。そして彼女が「そういう人」なのだということも。

「父の骨。敵の血」

 ワームテールを昏倒させた。ルーラは墓場に場違いな大鍋を覗き込むと、その中へ加えられたものをぴたりと言い当てる。
 懐から取り出された小瓶は無造作に傾けられた。

「始祖の呪縛。須く繋がれん」

 鍋に変化はない。少なくともハリーからはそう見えた。
 ルーラは淡々と儀式を引き継いでいく。



 杖の一振りによって意識を失くし、ぐったりと首を落としたワームテールが立ち上がる。
 取り出されるや否や迷いなく振り下ろされたナイフに、ハリーは目を逸らすことも出来ずその瞬間をまざまざと目撃した。
 切り落とされた腕が、ぼちゃりと鍋へ落ちる。
 ワームテールは絶叫と共に覚醒し、地面をのた打ち回った。

「――オブリビエイト」

 鋭い忘却術が蛇を撃つ。
 半歩下がって、ルーラはくるりと姿を消した。


---


 言うべきか、言わざるべきか。迷った末にハリーはダンブルドアへ打ち明けた。

「ワームテールが僕の血を奪って鍋に入れたすぐあと、ルーラが現れたんです」
「なんじゃと?」
「ワームテールはすぐに失神させられて、ルーラの姿を見た蛇は忘却呪文をかけられました。ヴォルデモートも、彼女が現れたことには気付いてません」
「ルーラはそこで何かしたのかね?」
「はい。鍋に何か入れていました。銀色の液体です。それから…」

 ハリーにはシリウスがこれまでとは別の憤りにかられていることが分かった。

「ワームテールに自分の手を切り落とさせて、いなくなりました。その後すぐにヴォルデモートが復活したんです」
「あいつなら阻止することができた!!」

 シリウスの言葉にははっきりと同意することができる。けれどハリーは、シリウスと同じようにルーラへ怒りを覚えることができないでいた。

「でもあれは、本当はルーラじゃなかったのかも」

 一目見てルーラだと思った。なのに今となっては分からない。

「…どういうことじゃ?」

 あの時トム・リドルの墓の前で目撃した少女は本当にルーラだったのだろうかと、ハリーは自分を疑っていた。

「赤かったんです」

 最後までハリーを見ることのなかった瞳。月のない夜に似て黒い目をしたルーラとは、あまりにかけ離れて似合い過ぎた色。

「あの時。僕が見た人はルーラにそっくりだったけど、赤い目をしていました。――まるでヴォルデモートのような」

 まるで取り憑かれてしまったかのように。
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