こつこつこつこつ。石畳が鳴る。
三人分の足音は重なりもせず一定で、ひたすらにばらけ続けていた。
「ルーラはここで何してたの?」
「通りがかっただけよ」
ただの事実にはっきりと不思議そうな目を向けてくる。ハリーが「根は良い子」な、つまらない子供であることはとうに分かっていた。私にとって《英雄》であること以上に価値のない。
名声のはりぼて。
「この奥に家があるの」
その方が好都合だった。
「それって――」
「ハリー!」
野太い声。唐突な。
聞こえてきた方へ目をやると、路地の一つから見覚えのある大男が出てきてハリーに近付いた。
「おまえさん、こんな所で何しちょる? ここは――」
「こんにちは」
始まりそうになった立ち話を遮るよう、注意を引く声は僅かに強め。
絡む視線には習い癖の笑顔を乗せた。にっこりと。計算し尽くした完璧さで。
「ハリーは煙突飛行に失敗してしまっただけなんです。あまり責めないであげてください」
私はその気になればいつだって、誰であろうと魅了してしまうことができた。
それは容姿云々の安易な話ではなく魔力の問題。そういう「雰囲気」を当たり前のよう作り出せてしまう。二人揃って優秀な親から受け継ぐ才能の賜物。
「おまえさんは…」
「スリザリンのルーラ・シルバーストーン」
半巨人の一人や二人、黙らせるのに苦労しない。
笑顔一つで事足りた。
「ハリーとは同じ学年なんですよ」
ハリーだけなら構わないけど。森番までを加えた大所帯でこの辺りを歩くつもりは毛頭なかった。
(望まぬ遭遇/緋星と英雄。もりばん)
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