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『僕が半妖でなかったらどうだというんです』

 今まで一度だって聞いたことのない、冷め切った声で右京が問う。見守ることだけを許された私は、呼ばれなければ彼女の元に駆けつけることすら出来ない。

『そんなことはありえないと言っているのだ』

 大妖は苛立ちも露に右京へ詰め寄った。それでも彼女は取り乱す素振りすら見せず、逆にさもおかしげな笑みを浮かべる。

『いつまでも貴方の思い通りになると思ったら大間違いですよ? ――父さん』

 蓮華。と、音もなく呼ばれ私は狐火を放った。絶対の名を持つ力の前に大妖は成す術なく命を落とし、彼の力は私の力となる。
 右京は言った。これでもう大丈夫だと。

『大好きだよ蓮華』

 私は彼女の狂気を知っている。私だけが知っていた。

『もう絶対に離れたりしない』

 かつて一つだった私達は二つになったのに、今また一つになろうと二つでいる《必然》に抗っている。彼[カ]の大妖が生きていたならこの愚かしさを嘲笑っただろうか。それとも、忌々しいと歯噛みしただろうか。

『一緒にいよう』

 私の狂気を、彼女だけが知っていた。
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