腕の中へ抱え込んだ猫が不意に身を捩るよう私の耳元へ鼻先を寄せる。
「誰か来た」
ページを捲る手を止めて、私は静かにローブを引き寄せる。
「こんな時間に?」
「教師ではなさそうだけど」
「…こんな時間に?」
特等席の窓際を音が立たないよう努めて静かに離れる。読みかけの禁書をとりあえず元あった場所へ押し込んで、飛びついてきた猫を抱えた。
まず走りだしたのは私。次に猫。最後は私に手を掴まれた英雄君。
響く足音は一人分だ。
「…あら、便利な物を持ってるのね」
「君はどうしてあんなところに…」
「図書館よ? 読書に決まってるじゃない」
「見られてよかったの?」
「上級生だとでも思うよ」
「…だといいけど」
「…なんで制服?」
「学生気分もいいかと思って」
「開き直ったの?」
「そんなところ」
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