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「・・・・なんで」



 睨むようにリドルを見上げるルーラのエメラルド色の瞳には、不満げな色がありありと浮かんでいた。



「駄目なものは駄目だよ」



 それ以上の問答は無用と言わんばかりにリドルは部屋の扉に手をかける。



「リドル!」
「また後でね」



 バタン。



「・・・何でよ」



 閉ざされた扉に向け手元の枕を投げつけるとルーラは背中からベッドへ倒れこんだ。
 不貞寝を決め込もうと寝返りを打ちながらブランケットを巻き込み、頭まで覆うと固く目を閉じる。



「理由くらい教えてくれたっていいじゃない」



 柔らかな日差しの下眠りに落ちるのはあまりにも容易だった。






























 ――我が主



 音もなく羽ばたく、それは純白の烏。
 誰。そう問いかけようとして、ルーラは自分の意識が肉体を伴っていない事に気付いた。



 ――我が主たるに相応しい人よ



 純白の烏。瞳は目の覚めるような赤。
 一目見てアルビノだと分かるそれはけれど、きっとただそれだけのものではない。



 ――我が名はクロウ



 その存在は危険だと心が叫ぶ。



 ――我が名を呼べ



 呼んではいけない。そう訴える。



 ――さもなくば、



(あぁ、これは夢だ)



 ――須く主は失われるであろう



 胸を締め付けるような哀しみが伝わってくるのに、私は涙することも出来ない。



 ――主の為に我は希う



 心は危険だと訴える。クロウと名乗った烏は自分が消えると訴える。
 ジャラッ。と、聞こえるはずのない音がルーラの耳朶を打った。



 ――須く、



 それは目覚めの兆し。



(待って!)






























 ――我が汝、汝が我であるように






























 息が出来ない。









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