「おいルーイ、見たか?」
「俺がいつもお前と同じもの見てると思うなよ? ルーク。勿論見たさ」
「二人とも何を見たの?」
「紅よ、ミラ」
「そうさステラ、ただルークの言いたいのはその紅を連れてたエメラルドの方だけどな」
「あら、そうだったの?」
「そうさ」
二組の双子が交わす会話を聞くともなしに聞いていたエリックは、弄んでいたクィリアを音もなく消し去ると壁に寄りかかり目を閉じた。
「エリック?」
窓際の座席に兄のルーイと向かい合って座るルークに声をかけられ、目は閉じたままひらひらと肩口で手を振る。
「まだ時間には早いし、僕は寝てるよ」
「「そう」」
それぞれ主の隣に座ったステラ・マリスとステラ・ミラが声を揃え、頷く気配がした。
「くれぐれも起こしてくれよ? 僕には信頼できる片割れがいないんだから」
皮肉ともつかない言葉にステラ・マリスとステラ・ミラは顔を見合わせ同時に笑う。
「俺たちもそこまで非情じゃないさ」
ルークよりも遥かに信頼の置けるルーイの言葉にほんの少しだけ口角を持ち上げると、そのままエリックは意識を薄闇に沈めた。
「おやすみなさい、エリック」
どちらともつかないステラの声を最後に静寂が落ちる。
規則的なページを捲る音を聞きながらまどろんでいたポラリスは、近付いてくる足音に意識を覚醒させた。
「3人」
「ライズか」
主語のない言葉に足音の主を悟り、カフカは読んでいた本に栞を挟みこむ。
「やっとみつけたよ」
「ノックくらいしたらどうだ?」
自らの使い魔であるディオスクロイ――カストルとポルックス――を引き連れたライズはノックもなしに扉を開き、かけられた割と棘のない言葉に一拍置いて悪戯っぽく笑った。
「じゃあ貴方は先輩に対する礼儀を弁えるべきだ」
「「そうだそうだー!」」
何かと騒がしいカストルとポルックスがハイタッチを交わし、疲れたと喚きながら扉の前に立つライズの背を押す。
「どうぞ」
「どうも」
カフカの向かいの席で優雅に寝そべっていたポラリスはすぐさま席を譲った。
「クッキーでもどう?」
「「食べる!」」
何も言わない主のそれは肯定であると解釈し、クルリと手首と回したポラリスの手には次の瞬間二つの包み。
「「やった」」
その中身を言われずとも理解した二人は顔を輝かせ差し出された包みを受け取った。
「ありがとう」
「どういたしまして」
幼い容姿に騙されるべからず。
その言動からは到底想像も出来ない攻撃力を誇る二人を従えるが故に、ライズは未成年ながら一族内で確固たる地位を持っている。
「ところでカフカ」
「何だ」
鬱陶しげに自身の使い魔を見遣るカフカの横顔を見つめながら、ライズはいつもの柔らかな笑みで窺うように首を傾げて見せた。
「クリフと一緒にいたんだけどね、これ以上迷惑をかけるのも悪いからつくまでこっちにいていいかな?」
「・・・二人が沈黙に耐えかねただけだろ」
肯定ともつかない言葉にはポラリスお手製のクッキーを頬張る二人が異を唱える。
けれどカフカの「No」以外は全てが「Yes」だと熟知しているライズは、「ありがとう」と呟いて窓の外に視線を移した。
程なくしてホグワーツ特急はホグズミート駅へと辿り着く。
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