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「――――」

 見覚えのない背中を追いかけて走る。暗い森の中。月明かりだけが薄っすらと足下を照らしていた。殆どを鬱蒼と葉を茂らせる木々に遮られてはいる。けれど、辛うじて前を走る人影を追いかけることくらいはできた。

「――――」

 誰かが何か言っている。

「――――」

 途切れることのない言葉が小さな背中を追いかけていた。人影は走る。どこまでもどこまでもどこまでも。多分、この声が聞こえている限り。

「――――」

 この声は消さなければならないと、そう直感した。思考するよりも早く体は《次元の狭間》にしまってある杖を取り出し、振り向きざま魔法を紡ぐ。

「 ユ ー ル 」

 声は消えなかった。
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