魔王が死んだ。誰が殺した?
魔王は愛した女に殺された。
ならば誰が《魔王》を引き継いだ?
「ラスティール」
ゆったりと呼ばれて目が覚める。
「なぁに? シーリン」
「下りてきて」
お気に入りの枝から落ちるように木の下へ。ふわりと魔力で着地を軽くして、顔を上げるとシーリンは少し離れた所に立っていた。
「おはようシーリン」
甘い匂いがする。
「また木の上で寝てたの?」
「うん」
「もう…」
おいで、と差し出される手は迷わずとった。シーリンと二人。手を繋いで、ぐるりと薔薇の垣根を回り込む。
「今日はケーキを焼いたのよ」
「道理で。甘い匂いがすると思った」
オレンジ色の薔薇に囲まれた東屋。二人きりのお茶会はしめやかに。邪魔する誰もを私が排除して、そのことはシーリンだって咎めない。
「どうぞ召し上がれ」
切り分けらたケーキは白く赤く甘く、幸福の味がした。
「食べ終わったらちゃんと仕事をしてね」
「はぁーい」
二つ返事で頷いて、また一口。白くて赤くて甘い幸せ。目眩がする程の充実は、いつだってシーリンが連れてくる。私は幸せ。シーリンが私を造ってくれたから。
「大好きよ、ラスティール」
「うん」
だから世界は滅びない。
《魔王》は魔女の「娘」が引き継いだ。
(間違いだらけのお伽話/魔女と残り滓。めでたしめでたし)
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