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 工藤マイネは自分の《子》に感情を与えようとはついぞ考えたことがなかった。それはとても残酷なことだと思っていたし、何よりマイネが得意なのは「機械弄り」であって、純粋な機械へ感情を与えるようなことは神の領分。人がどうこうしようと努力してどうにかなるようなものではないのだとさえ考えてもいた。
 《子》を動かすために必要なのはプログラム。定義したプロトコルに忠実な文字の羅列。その中でどれほど「人間」のように振舞わせようとそれは所詮「そう」定められているからに過ぎず、またマイネもそれが正しい有り様だと考えていた。機械は機械。マイネはけして、「人」を作ろうと望み《子》を造ったことはなかったから。《子》とはただそれだけの存在で構わなかった。

「こんにちは」

 だからそれが予定にない音(ノイズ)を発した時。マイネはその音階が「言葉」であるということさえ咄嗟には理解できず、立ち尽くし声を失った。
 理解したくもなかったのだ。

「マスター」

 壊すため生み出す大切な《子》に、心が宿る残酷さなんて。





(糸断つ傀儡/解体屋と創造物。はんらん)
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