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「デリット、おいで――」

 翳した手の中へ違わず現れ、十字架を模したペンダントは人殺しの剣へと転じる。

「死ね」

 背後からの一撃。
 致命的となるはずの一閃は、何故か手応えなくするりと敵の体をすり抜けた。

「あり?」
「おいおい、なんであんたまで生きてんだ…」
「ティア!?」

 地面へ深々とめり込んだ剣は置き去りに、まず距離を取って。それから絡めた鎖を手繰る。

「おかしいな…」

 はてさて首を傾げると、説明はご親切にも背後から。そいつは触れるものを選択することができるんです、と。
 そういえばそういう風に殺されたような気がしないでもない。

「あんた、ティア・グランドか?」
「カインだよ。ティアはお前が殺したでしょ」
「だよなぁ…」

 どうしたものか。

「アレン、あれはどうやったら殺せるの?」
「状況見ろよ。ちんたらしてると箱舟の崩壊に巻き込まれるぜ」
「だから?」

 無造作に振り抜いたデリットの生む剣気は建物を割った。
 けれどやはり、私を殺したノアには傷一つつかない。

「むぅ…」

 くやしい。

「カイン・ノドが命じる――」

 砕けろ。

「うおっ!?」

 負け惜しみの腹いせ。
 足場どころか街そのものを破壊し尽くす勢いで力を揮い剣を収める。

「もういらない」

 ペンダントを投げつけると、神田は案外あっさりそれを受け取った。

「てめぇどっから現れやがった」
「心配で様子見に着てあげたのよ。でも、あの男の姿見たらついカッとなっちゃって」
「答になってねぇ」
「魔法」
「馬鹿にしてんのか」
「えぇー…」

 本当なのにと、軽薄に笑って姿を掻き消す。

「元帥たちの方、手伝ってくる」

 そう、気安い声だけ軽く残して。


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