うるさいのが出てくる前にさっさと帰るつもりだったのに、チェルベッロは思いの外仕事が早かった。
「――恭弥!」
「……」
じゃじゃ馬な弟子より素直な弟分の心配でもしてればいいのに、観覧席から出た跳ね馬はまず私のことを呼び止めた。そうくるとは思っていたけど。思ってたからさっさと帰るつもりだったのに。
「――大丈夫か?」
「触るな」
無遠慮に伸ばされた手を容赦なく叩き落として一歩距離を取る。
「…イツキはどうした?」
「目の前にいるよ」
「は…」
「恭弥は面倒臭がって来なかった」
「お前らなぁ…」
「分かったならもう帰っていいでしょ」
「いーわけあるか! ったく、顔に傷でも残ったらどーすんだよ…」
「双子の見分けがつくようになる」
「バカ言え」
「あぁ、駄目、触らないで」
「違うの。そうじゃない。接触嫌悪症だから怪我してる時下手に触られると殺しちゃう」
「殺すって…」
「恭弥じゃないんだから、治療くらい自分でできる。帰れば恭弥が放っといてもくれないだろうし」
(だからかまわないで)
---
「――送りましょうか」
「…クローム髑髏は?」
「千種たちと一緒です」
「あっちについてあげればいいのに」
「そういうわけにもいきませんから」
「ふぅん…」
(ながれというものがあるのでね)
PR
カテゴリー
最新記事
(08/25)
(08/04)
(07/28)
(07/28)
(07/14)
(07/13)
(06/02)
カウンタ
検索