忍者ブログ
小噺専用
80 80 80 80
80 80 80 80
[821]  [820]  [819]  [818]  [817]  [816]  [815]  [814]  [813]  [812]  [811
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


「いたぞ」



 外つ国の風を辿っていた須佐が声を上げ、手持ち無沙汰に寝転がり空を見上げていた冬星は一度頷いた。



「どこ?」
「そんなに遠くない。森だ」
「ふぅん」



 差し出された手になんの躊躇いも無くつかまり立ち上がる。



「じゃあ、行こうか」



 一陣の風が吹き抜けた。






























「ごめんね、蒼燈」
「まっ・・」
「生きて」



 嗚呼、愛しい人。それでいて残酷な貴女は僕の目の前で命を絶った。
 不可視の壁を血の滲む手で叩き僕は絶叫する。
 嗚呼、愛しい人。何故貴女が死ななければならなかったのですか。



「・・・・ぅ・・ひ・・・・・・そ、う・・・・――蒼燈!」
「っ」



 壁が消えなだれこんだそこにはもう何も無く、――「幻聴だ」――耳元で聞こえた悲痛な声を振り払う。



「ち、ろうっ」



 とめどない涙が視界を濡らした。
 それでも、もう、後戻りは出来ない。してはいけない。許されない。



「この地を守りし四神が一人地狼よ! 柱は立った。蘇れ!!」



 もう何も残ってはいない。



「我が名は蒼燈。汝を服従させんとし、汝等が守るべき一族最後の一人だっ」



 年老いた地狼は死に、崩れた結界からヴァチカンの猟犬が放たれた。
 渦巻くは恐怖と、憤りと、混乱。



 ――我が、名は?



 全てを侵す哀しみ。



「夜空っ!」



 嗚呼、愛しい人。貴女の命を受け新たな神獣[シンジュウ]が生まれた。



「――我は地狼。名を夜空。心を捧げよ我が主」
「くれてやるさ、いくらでも。そして喰らうがいい地狼よ」



 闇と見紛うばかりの深紫の毛並。彼女と同じ空色の瞳。
 これで満足でしょう?



「僕にはもう理由[ワケ]がない」



 だから〝僕〟も共に逝く。



「汝を生かすは哀しみか、我が主」



 今行くよ、






























 ――姉さん






























「神という生き物は酷く弱い」



 広がった血溜まりを冷ややかに見下ろし蒼燈は嗤う。



「そうは思いませんか?」
「須、佐・・」



 所詮、神など下界では人にさえ劣る存在。
 神界の澄んだ大気がなければいとも簡単に命を落とす。



「惰弱な」



 その栄華も既に過去のものだ。










 神の血に濡れた刃が振りかざされる。



「まっ」
「これが運命[サダメ]です」



 そして振り下ろされた。









PR
Comment
name 
title 
color 
mail 
URL
comment 
pass    Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
コメントの修正にはpasswordが必要です。任意の英数字を入力して下さい。
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
Template by Crow's nest 忍者ブログ [PR]