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「おおっと、なんてこった」



 紅の引かれた細い唇にそぐわない俗な言葉を口にし、どこからともなく取り出した扇で女は口元を覆った。
 肩の大きく開いた紅色の着物。体の前で大きく蝶の形に結ばれた帯。肩を流れる濡れ烏色の髪。爛々と輝く血色の瞳。この場には到底そぐうはずもない、どこか禍々しくも美しいその立ち姿に、誰が目を奪われずにいれよう。



「とんだ場にいあわせた」



 けらけらと笑いながら女は、目の前の異形に恐れ戦きもせず近づく。
 そして、



「とりあえず、消えや」



 さも当然のように、言い放った。
 ついと差し出した扇をぱちりと閉じ、くるりと手首を回し、開いた手の平にはもう何も持ってはいない。



「でないと喰ろうてしまうでぇ」



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